弥生。三月。桃の月。百花繚乱の花前線は、梅に始まり、桃から、菜の花へと移っていく。大地はほころび、小川の水もぬるみ、大自然の生命の息吹がざわざわとさんざめきはじめる。長かった冬ごもりに別れを告げ、陽光のもとへと歩みを進めよう。
ふくも、さらに旨味を増す時期である。小皿に風情の違う刺身をほんの少しずつ盛り、、器とともに食感の違いを楽しむのもいい。旬たけなわの活きのよいものを食べるということは、その生命力を吸収することでもある。生かされて生きる。そういった自然の摂理を尊び、ものみなに感謝しながら、春の訪れを謳歌しよう。自然の移ろいを敏感に感じとり、旬という自然の恵みを享受する。それこそが、懐石の醍醐味である。