如月 霞初めて棚引く候

 如月には、「衣をさらに着る」の意がある。立冬を迎え、暦の上では春がやってきても、寒さは一年のうちで最も厳しく、冷たい風が身にしみる時期である。夜の闇は深く、暁はまだ遠い。しかしそこはかとなく春の気配は感じられる。自然の中に予兆を見いだし、その日を待ちわびるのもまた一興である。
   太陽もそっけなく、火も短い寒い日には、体の暖まるもてなしが何より。献立には、充分暖かいものを取り入れることである。
 二月は食材の乏しい季節ではあるが、反対に海の幸は脂が乗っておいしくなる。ふくは、腹に白子を持ち、馥侑たる味わいを届けてくれる。白子は「西施乳」の異名を持つが、これはその滋味を、中国の春秋時代の絶世の美女の名になぞらえたものである。ふくの醍醐味を、この時期にぜひ味わいたい。

【如月の献立】

 

『ふく百華』出版委員会発行 『ふく百華』より抜粋
制作協力:天白ひらこし