美術・装飾
株式会社東京美工 専務取締役

若松 孝市

1973年 装飾会社に入社し、京都太秦撮影所にて
TV時代劇を手掛る
1975年上京して、TBSのドラマを担当
1982年 東映・東京撮影所にて
映画の装飾を手始めに現在に至る
主作品
1992年 天国の大罪(主演:吉永小百合 監督:舛田利雄)
1993年 REX 恐竜物語(主演:安達祐実 監督:角川春樹)
1995年 きけ、わだつみの声
(主演織田裕二 :監督:出目昌伸)
1995年 日本一短い「母」への手紙
(主演:十朱幸代 監督:澤井信一郎)
1996年 霧の子午線(主演:岩下志麻 監督:出目昌伸)
1997年 北京原人(主演:緒形直人 監督:藤順彌)
1998年 時雨の記(主演:吉永小百合 監督:澤井信一郎)
1999年 鉄道員(主演:高倉健 監督:降旗康男)
2001年 ホタル(主演:高倉健 監督:降旗康男)
2002年 陽はまた昇る(主演:西田敏行 監督:佐々部清)
2003年 チルソクの夏(主演:水谷妃里 監督:佐々部清)
2003年 赤い月(主演:常盤貴子 監督:降旗康男)

映画の中で「美術」は、建物などのハード的な部分を主に担当し、それに対して「装飾」は映画に合った室内のインテリアや俳優の装身具、テーブルの上のお茶など細かいものまで担当する。東京美工の若松さんは、映画『チルソクの夏』で、美術・装飾の全てを手がけている。映画の中で降る雨や、主人公の部屋など、俳優以外の映画に登場するすべてを手がけているといっても過言ではない。

「郁子の家は、実際に生活をしている民家を借りて撮影したんですよ。家具やエアコン、生活小物を全て一旦、撤去して、昭和五十七年当時を再現しました。」そんなシーンを一つ一つ丁寧に作り上げていくのが若松さんの仕事。そのために毎回、大変な苦労をされているそうだ。映画には必ず時代背景があるし、ストーリーは全て違う。その映画・そのシーンに相応しい、色々なジャンルの背景やインテリアを作らなければならない。

「大変なことばかりだけど、しかたないね。仕事だから(笑)。『REX 恐竜物語(監督 角川春樹 )』の撮影で、『山全部をネオンで染めて』と言われたときは『どうやるんだよ?』って内心思ったけどね。でも、結果は何とかなったよ。成せばなる、何事もだね。」さすが三十年の経験と実績が、成せる技と言うべきであろう 。

大変な思いをしてまで、この仕事をつづけることができるのは何故か?

「この仕事に携わる前は、ある一部上場の大手会社に勤めていたんだけど、そこでの仕事は、自分にとっては、あまり魅力がなく、長く続かないと思ったんだ。で、どうせなら自分の好きな仕事をしたいって考えて、インテリアの仕事を探していたんだどけ、知り合いに勧められて、京都・太秦の装飾会社に入ったんだ。それからずっと、美術の仕事に携わってる。正直、最初は面白くないなって思ってたんだどけね。本当に厳しい世界だから。でも一緒に仕事をする人の中に、この人に追いつき、追越したい!って思える先輩がいてね。今までやってこられたのは、その先輩たちのお陰かな。」
自信に満ち溢れ、ちょぴり強面の若松さんの風貌からは、とてもそんな時代があったとは思えない。「若いときの苦労は買ってでもせよ!」と、言われているようだった。(映画『チルソクの夏』では、山本譲二さん扮する郁子の父親をボコボコにするヤクザ役で、スクリーンに登場している 。)

では、美術・装飾に携わる人間として、映画のココを見て欲しいという、監督や俳優とは違った思いはあるのだろうか?

「映画は、俳優の芝居だけを見るのではなく、そのバックで何気なく演技をしている美術や、装飾も見て欲しい。演技をしているのは、俳優だけではないんだっていうことを伝えたい。私たち美術スタッフは、少ない予算(笑)の中で、知恵を絞って節約して、いかにイメージしたセット作りを実現できるかが、腕の見せ所だと思っている。」
たしかに、俳優がどんなに素晴らしい演技をしていても、背景やバックがチグハグだと、どこか違和感を感じてしまうものだ。これからは、若松さんが携わった映画を見る際には、若松さんの「こだわり」を探すことに一生懸命になりそうだ 。

美術・装飾の仕事を目指している方にアドバイスをお願いした。

「美術・装飾の仕事は、時代劇からSFまで毎回、扱うものが違うから大変だけど、またそれが楽しいところでもある。やる気と根性がないとダメだね。それと、センスを磨く努力も必要。ようは常に勉強しないとダメ。図書館に行ったり、色々な人に話を聞いたり。常にアンテナを張り巡らして、何にでも興味をもつように心がけることも必要だと思うよ。」

最後に・・・。

「人との付き合いは、礼に始まり、礼で終わる。その事をわすれてはダメだ」と始めて会った翌日に、私は若松さんに叱咤された。実はインタビューの前日、佐々部組の方とお食事をする機会があり、どうしても途中で退席しないといけなくなった私は、若松さんに挨拶もせず、退席した。最近、他人から注意されることが少なくなっていたので、自分の行動を振り返るいい機会になった。しかし今の時代、出会って二日目の人に、「悪いことは悪い!」と言える人は、希少ではないだろうか。流行のドラマの言葉を借りると、「古き良き時代のオトコ」に間違いない。

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