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初めて篠原さんに会ったのは昨年、映画『チルソクの夏』の下関応援団が集まった、ある会でのこと。ベリーショートで、革のパンツ、大また歩きで私に近づいてくる篠原さん。「あれ?思ったより小さい。でもなんてパワフルなんだろう。エネルギー出しまくってる!」が、彼女に対する第一印象だ。
映画の買い付け、劇場との交渉、宣伝活動など、映画が出来上がって、その映画を育てていくのが篠原さんの仕事。その中でも重要なのが映画の買い付け。外国映画の場合は「カンヌ映画祭」や「ベネチア映画祭」などの会場で並行して「フィルムマーケット(映画の展示会)」が開催され、そこで売買される。ただ最近では、有名監督になると、映画ができる前に売買されてしまうケースもあるそうだ。篠原さんが映画を買い付ける基準を聞いてみた。
「作り手たちのハートですね。それが見えちゃうんですよ。五分ぐらい観てたら、やりたい映画か、やりたくない映画かわかっちゃいます。その映画の中に、作らなければ生きていけないくらいの何かがあって、情熱がある映画を選んでいます。今の時代、大きく分けるとハリウッド映画と非ハリウッド映画があって、九割九分ハリウッド映画なんです。つまり、商品としていくら儲かるか?っていうのがまずあって、誰(俳優)を当てはめていこうか?っていうのがハリウッドのシステムなんです。それが映画界のマーケットを、ほとんどを牛耳っているわけですよ。でも、そういう映画でなく、観ていて面白いと心底思う映画、情熱が伝わってくる映画、そういう映画を何とかやって行きたいと思っています。」
篠原さんがこの仕事に就くのに驚くべき経緯がある。誰もが羨む有名百貨店に勤めていたにも関わらず、二十九歳のときに自分の生きていく道に迷い、退職。同時期に、ただ映画を観るために香港に行き、朝から夜中までずっと映画を観続けるほど、香港映画の虜になる。日本ではまだあまり配給されてない香港映画を、日本人にもっと観て欲しいという想いだけで、映画祭を開催し、配給会社を自ら立ち上げる。コネもない、ノウハウも何もないところからはじめているのだ。
「ど素人ながら映画がどういう風に輸入されて、どういう風に宣伝されて、どういう風に公開されて、どういう風にお客様に観ていただくのかっていうのが一通りやれて、それが大きな財産だったし、いろんな人が手伝って助けてくれた。自分が、本当にいいと思える映画を上映して、お客さんが泣きながら映画館を出て行くのを見たり、「良かったです」と言ってくれたりすると、映画の仕事ってなんて面白いんだろう、なんて贅沢な仕事なんだろうって思います。」
最後にこの仕事を目指している方にアドバイスをお願いした。
「映画を好きになる。尋常じゃないくらい映画を好きな人にやってほしい仕事。少なくともやりたい映画が育つ為には、映画のために命を捧げるくらいの人でないとダメですね。その為にはいい映画をいっぱい観なきゃいけない。それもテレビとかで手軽に観るのではなく、映画館で映画を観る。感動の大きさが違いますからね。」
篠原さんの溢れんばかりの情熱が、ハリウッド映画を超える日がいつかくる・・・。そう思わずにはいられなかった。
※怒涛の映画人生を綴る『シネマ突貫娘〜映画ほど素敵な商売はない〜/篠原弘子著(扶桑社)』には、ウォン・カーウァイ監督、金城武、トニー・レオン、レスリー・チョンなど、香港・台湾の監督、俳優の素顔が垣間見えるエピソード、秘蔵写真も満載。仕事や生き方に悩んだときに読みたい一冊だ
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